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代表野口の資格・検定研究ラボ - 検定のすゝめ
テスト工学

良質なテストを作成するために意識すべき3つのこと

Tips for Designing A High-Quality Exam

2018-12-14

【1】テストの目的

そのテストは何のために行うのか。テストはその目的を果たすための「手段」です。

例えば、学校の定期試験であれば、その期間に習得すべき能力を習得しているかどうかを確認するのが目的になりますし、仕事に関する合否の試験であれば、合格者はその仕事に従事するのに必要な知識を証明できなければなりません。TOEICのようなスコア型のものであれば、得点分布の状況でどの受験回で試験を受けても同様のスコアが出るようにコントロールを行い、得点率で能力値を評価できるように作成するべきです。

今回は多くの試験で行うべき、試験作成で意識すべき「合否基準」にフォーカスを当てて説明します。

【2】「妥当性」と「信頼性」

「妥当性」と「信頼性」良いテストの条件として最初に問われることがこの2つです。

妥当性…そのテストが本当に測定したいものを測定しているか
信頼性…そのテストの結果が状況に左右されずテスト対象の一貫した解答を期待できるか
イメージとしては、身長を計測するのに体重計で測るのは妥当ではないですし、体重を測るにしても壊れた体重計では一貫性が無いということを想像してもらえればと思います。

テストは目的を得るための手段であり、必要な情報を得るために行われます。そのため、テストの目的に合致した内容のテスト、つまり妥当性がなければなりません。また、毎回結果が変わるようでは、テストによって得られたデータは信用がおけません。つまりテストの信頼性も求められます。

妥当性には、内容的な視点と認知的な視点が求められます。
具体的には、合格するために、適正な試験分野(=内容的)が出題されること、また、その問題が合格者を診断するに適正な難易度や思考的スキル(=認知的)で作成されることの2つの視点が必要となります。

信頼性は簡単に測ることができます。再テスト法や平行テスト法、折半法等がありますが、ここでは当社で採用している内部一貫法をご紹介します。

内部一貫法

内部一貫法は、一貫性による信頼性を追及する方法です。信頼性を出すときに最もよく用いられます。
例えば、折半法は一つのテストを二つに分けて、その間の相関を見る方法ですが、二つに分けるやり方によって相関は異なってきます。そこで、全ての分け方について信頼性係数を出し、それを平均するのが内部一貫法です。

こうして得られる値を、特にクーロンバックのα係数と言います。式は以下です。

α=項目数÷(項目数-1)× {1-(各項目の分散の合計÷合計点の分散)}

また、この計算では各問題を抜いた場合の信頼性も分かりますので、信頼性を下げる問題を改善したり抜いたりすることや、問題を追加することでテスト全体の信頼性を上げることも可能です。

このように妥当性と信頼性の高いテストを作成することは非常に重要です。

【3】「公正性」と「公共性」

次に、テストには「公正性」と「公共性」が必要です。

公正性とは、受験をする機会が公正に開かれているかどうかです。受験が閉ざされた空間でのみに制限される場合、希望者がその業務への道が閉ざされてしまうため、試験制作団体は考慮しなければならない概念の一つです。

公共性は、実際に合格した人が実社会や実業務で役に立つかという課題です。実際の業務に遂行能力の無い人が合格してトラブルを起こしてしまう場合、他の合格した人も含めて公共的な資格の価値自体が失われてしまいます。ですので、試験結果が毎回ぶれないような妥当性、信頼性のある合格者を診断するのに相応しいテストを作成する必要があります。

テストの意味を今一度考える

まとめると、テストは対象に対する情報を得るために行われます。ということは、手段であって目的ではないのです。そのテストの意味を理解し、目的を達成するための手段としてテストを利用するといった方が分かりやすいでしょうか。

そのためにそのテストで診断できることは何なのかの意味を理解し、妥当性、信頼性のある公正な試験を作成するというのが、テスト制作者の意識すべきことで、きちんとした理念を元にテストを作成することで、社会に対して「適正な物差し」を提供することができます。

それができればそのテストはそれ自体に価値があると言えます。テスト制作者の方は一度そういう視点で問題制作を行っているかを確認してみると良いでしょう。是非、ヒントにしてみて下さい。

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