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代表野口の資格・検定研究ラボ - 検定のすゝめ
コラム

「リスキリング」について考える

About Reskilling

2023-02-27

こんにちは。CBTS代表の野口です。
今回は、巷で話題になっている「リスキリング」という言葉について考えてみたいと思います。

リスキリングとは?

少子高齢化真っ只中の日本において、労働者確保の問題は最重要課題です。

例えば技術職の現場では過去の技術しか知らず新しい技術についていけない技術者はいます。彼らをリスキリングして新たなビジネスで活躍できる人材に育て上げるという事は、リスキリングの概要のひとつになっています。

岸田総理は所信表明演説で、リスキリングの支援に「今後5年間で1兆円投入」と発言されました。また昨年の新語・流行語大賞にもノミネートされるなど、リスキリングは非常に注目されています。

「ああ、それは良い考えだね。是非推進していこう」と思う方も多いかもしれませんが、現実的にはかなり難しいと考えています。

まずDX人材育成のリスキリングが実に難しい。例えば40歳以上の人がこれからリスキリングしてプログラマーになろうという発想。これはとても非現実的なことと思っています。リスキリングにかける予算は無限ではありません。限られた予算から捻出しようとするならば、20代の若手を育てた方が良いだろうと。将来への伸びしろが違うからです。

いやいや、DX人材はプログラマーの事だけではなく、DX化全体に通じた基礎知識を持った人材を育て様々な分野で活躍してもらう事で、そういったミクロな議論ではないという考えもあるでしょう。基礎的なリテラシー部分の底上げ?いやいや40歳にもなってれば基礎的な事は知っているでしょう。逆にその時点でそこに気づけていない・知識を持っていない意識の低い人材をそもそもリスキリングできるのか?と疑問視しています。

いやいやリスキリングは、DX人材に限定したものではないので、DX以外の得意な分野で活躍させれば良いと次は反論が来るかと思います。ではそれは何か?となります。例えばコミュニケーション能力や管理能力を磨いてマネージャー職へ?え、それは今の日本の人事制度であれば、できる可能性のある人はそもそもその職に既に就いていると思うのですが・・・。

ではそういった役職ではなくあくまでスキル?となると今現在の職種では手に入らない技術を、再度学ばせ、違う職種で活躍させる事ができるスキルを身に着けさせる事になると思うのですが、それも難しいですよね。という話です。これまで出来なかった人を育成するわけなので。

更にはその人が、新たなスキル獲得に対してモチベーションを持って取り組み、壁を乗り越えてもらう必要もあるわけで、本人のモチベーション維持がまた難しい課題となります。

リスキリングの課題

リスキリング自体は、この国の再生に必要な課題だと思います。ただ「言うは易く行うは難し」具体的にその人に何を身につけさせ、実際の仕事で役立つ人材にするかという具体策は個人や会社ごとに異なり、かなり難しい問題だと思っています。

このリスキリングに5年間で国家予算1兆円が使われるわけですから、この予算を利用して多くの収益を得るサービスが台頭してくると思います。資格検定制度にもリスキリングした人のスキルの証明としてスポットも当たっていくでしょう。試験業界に位置している身としては、まさにビジネスチャンスだとは思います。

しかしながら、今後5年間で世の中を変えていくようなビジネスモデルに対応できる人材をきちんと育成しないと1兆円の税金が無駄になるわけです。

この予算を使う方々にはマクロな抽象論でお金を垂れ流して現実は何も変わらないのではなく、業界ごとに課題を解決するために、人材をきちんと育成できるミクロな具体策まで掘り下げていくことを期待しています。

日本の未来に意味のある投資になるリスキリングによる人材育成が行われる事を切に願います。今後のリスキリングにどのような施策が政府から生まれ、また教育機関などに具体的にどのような形のサービスを実現していくのか注目していきたいと思います。

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