「JDLA Generative AI Test」
一般社団法人 日本ディープラーニング協会(JDLA)
専務理事
岡田 隆太朗氏
発展目覚ましい生成AI の分野において、基礎知識を有し、適切な活用を行うための能力や知識を有しているかを検定する。
安定したシステム設計や豊富な導入実績が決め手。より多くの受験者に受験機会を提供できるIBT試験で、生成AIの知識・技術の普及へ。
ディープラーニング技術を日本の産業競争力につなげることを目的に設立
CBTS:貴協会の創設意図についてお聞かせください。
岡田専務理事:
人工知能(AI)は、過去第1次・第2次とブームが巻き起こるも、実用性・汎用性の成果が上げられず万能性への過剰期待が裏切られることにより収束を繰り返してきました。しかし、ディープラーニング技術の発展により2000年から現在まで続く第3次ブームはいまだ熱を帯びています。
当協会名にも掲げているディープラーニング(深層学習)とは、機械学習の一種で脳の神経回路を模倣した「ニューラルネットワーク」モデルを採用しており、人間が情報をインプットせずともAI自ら必要な情報を探し出し、判断することを可能とする手法を指します。この手法含め、当協会理事長であり、東京大学大学院工学系研究科の教授を務める松尾豊先生がAI分野の過去・現在・未来について著した「人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの」が2015年に出版されたことで議論が活発化しました。その折に、ディープラーニングを一過性のブームで終わらせず、いかに社会実装を推し進めるかを命題として検討が行われた結果、有識者による適切な知識の普及および検定制度の充実による人材育成の必要性が見出され、2017年に一般社団法人日本ディープラーニング協会を設立するに至りました。当協会は公的機関や企業、有識者によって組織され、正会員企業においては44社に参画いただくまでになっています(2024年5月時点)。
当協会の主な取り組みは、ジェネラリストを認定するG検定やエンジニアを認定するE資格、そしてCBTS社へ委託しているGenerative AI Testといった試験の運営や、イベント開催を通して産業応用事例や導入課題と対策等、産業が必要とする情報を提供しています。また2024年4月に総務省および経済産業省より発表された「AI事業者ガイドライン(第1.0版)」においては知見を提供させていただき、当協会のシラバスが教材の柱となっています。
CBTS:当社に委託いただいているGenerative AI Testの試験概要や受験者層はどのようなものでしょうか。
岡田専務理事:
Generative AI Testは生成AIに特化した知識や活用リテラシーの確認のためのミニテストです。近年企業活動にも導入がすすむ生成AIを、企業で安心かつ有効に活用するために必要不可欠な知識を有しているかどうかを確認できます。これまで生成AI分野においては学習指針がなく、どこまでを理解していれば理解していると言えるのかが不明瞭であったため、指針としての役割も担うべく試験を立ち上げました。またAIは日々技術が進歩する生きた分野ですから、一度合格したら終わりではなく、最新の情報をキャッチアップできているかが非常に重要な観点となります。そういった部分を測るためにも年2回、毎回出題内容をブラッシュアップして試験を実施することとしました。初回(2023年6月)試験より、合格者には年号と試験回を記載したオープンバッジによる合格証を発行しており、視覚的にもどの時点までの知識を有しているかが分かるよう工夫しています。
受験者層については、試験立ち上げ当初は個人の受験者が大半を占めていましたが、近頃は企業単位での問い合わせも増え、さらなる生成AIの認知向上・企業活動への活用を期待しています。
受験者増加に耐え得るシステム設計や豊富な導入実績などが決め手
CBTS:委託先に当社をお選びいただいた理由についてお聞かせください。
岡田専務理事:
Generative AI Testは2023年6月から開始しました。準備期間が短く、また詳細な試験開催要件が未確定な状況で業者選定を行う必要があり、当時はなかなか余裕のない状況にありました。何社か運営会社にお話を伺いましたが、その中でCBTS社を選んだ理由は以下の点が挙げられます。
・CBTやIBTといった試験配信形式の選択肢の多さ
・カスタマイズの柔軟さ
・受験者の増加に耐え得るシステム設計
・以前CBTにてE資格を委託していた安心感
※試験のターゲット層の変更に伴い現在では他社に委託
・国家試験を含む豊富な試験の導入実績
CBTS:どういった理由からIBTを採用されたのでしょうか。
岡田専務理事:
より多くの方に受験機会を提供するために、スマートフォンやPCおよびネット環境があれば任意の時間※・場所にて受験いただけるIBTが適していると判断したためです。これにより、受験者の受験に対するハードルを下げることができたのではないかと思います。
※受験可能時間内に限る
柔軟なカスタマイズ対応で、最適な試験仕様を実現
CBTS:実際にIBTで試験を実施されてのご感想を伺えますか。
岡田専務理事:
CBTS社のシステムはカスタマイズに対応している一方で、システムのインターフェース自体は洗練されたシンプルなデザインとなっており、受験者目線で設計されている印象です。試験当日についても、受験者任意のタイミングでスマートフォンやPCで受験できるという今までにない方法で実施したものの、これといった問い合わせやトラブルもなく平穏無事に終了できました。実施までのスケジュールやカスタマイズの要件決めなどといった部分で困難はありましたが、決まってさえしまえばその通りに粛々と進んでいく安心感がありますね。
CBTS:カスタマイズについてはご満足いただけていますでしょうか。
岡田専務理事:
当協会からの要望には最大限寄り添った対応をしていただいています。カスタマイズで導入した主な機能は団体申込・管理機能や記述問題の採点結果取り込み機能です。第1回は試験の実施自体を成功させることを目標としていましたので、どちらも第2回から導入しました。
まず団体申込・管理機能は、前述のとおり企業からの問い合わせも増えてきていることと、同様の機能を他試験でも導入しており共通の試験規格とするために採用しました。団体申込に関するCBTS社の豊富な知見をお借りし、最適な仕様を実装することができたかと思います。
また記述式問題の採点には、協会初の試みとして実現した生成AIによる自動採点を採用しました。試験を提供する側として、受験者の努力が正しく試験結果に反映され、またその試験結果の有効性を担保できる試験であらねばなりません。そういった意味で、記述問題は受験者の本質的な理解度を測る手段として非常に効果的と言えるでしょう。なお生成AIによる自動採点については、AIでも高い精度で採点ができるよう設問を工夫する必要があります。生成AIを活用し、かつ人間による確認を組み合わせることで、生成AIあるいは人のどちらか一方だけでは困難なレベルの品質の試験を提供できると考えています。
今後実績を重ねることで、より効率化を図っていきたいと思います。
CBTS:受験者からのお声などは聞かれていますか。
岡田専務理事:
受験者からは、生成AI分野はどこまでを理解していれば良いのかが曖昧だったが、試験の合格という区切りができたことで学習が捗り、また学習の過程で頭の中が整理できたことが収穫だった、といった旨のお声をたくさんいただいています。当協会の目的とするところを実現できており喜ばしい思いです。
▲JDLA公式HPより(https://www.jdla.org/certificate/generativeai/)
発展途上のAI分野だからこそ、価値ある学びの提供を
CBTS:今後の展望をお聞かせください。
岡田専務理事:
AI分野においては、経済産業省や総務省、文化庁といった省庁からガイドラインが発表されたり、昨年2023年に開催された広島サミットにて広島AIプロセスが立ち上がったりと議論と発展が加速度的に進んでおり、大枠の活用方針は定まってきています。とはいえ、その方針をいかに産業の実運用に落とし込むかといった部分はまだまだ議論の余地がある状況です。そんな不明確なことが多い状況だからこそ、その時々で求められる知識を理解しているかを確認することのできる試験の存在が重要になってきます。その役割を当協会が果たすべく、引き続き出題内容の検討と試験仕様の改善に取り組み、受験者にとって価値ある学びを提供していくよう努めてまいる所存です。