「半導体技術者検定」
一般社団法人 パワーデバイス・イネーブリング協会
代表理事 田中成郎氏
時代と社会の要請に応えるべく、「半導体技術者検定」へと名称を変更しました。
様々な業界の発展を促す技術とビジネス形態が大きく変化しつつあります。
人工知能(AI)やIoTを駆使した「新ビジネスの創出」、「クルマの大変革」、「サステナブルな社会の実現」、仮想現実(VR)や高速無線ネットワークをフル活用した「メディアの進化」など、くらしや社会、産業に大きなイノベーションを生み出すこうした動きには、一つの共通点があります。それは、半導体の進歩とその効果的活用を前提として、成長する未来を描いている点です。
半導体技術者の活躍の場は、いまやIT業界や自動車業界だけでなく、あらゆる産業の企業が半導体技術者を求めるようになりました。金融、小売り、物流、医療、建設、農業、そして行政など、製造業以外の企業や機関でさえ例外ではありません。世界中の様々な業界の企業が、新しい機能・性能を備える半導体チップを開発し、それを使いこなしていく知識を持つ人材の確保・育成を急いでいるのです。
半導体に関する知識を持つ人材の価値は、これからますます高まっていくことでしょう。
半導体技術者検定は、半導体の作り手と使い手の知識を客観的かつ公正に認定する唯一の資格です。より多くの業界・業種の方々の受験をお勧めいたします。
全国47都道府県を網羅するテストセンターの多さが決め手。 CBTの利便性で受験者層の拡大を実現。
紙試験(PBT)としてスタートするも、会場の手配や運営が負担に
CBTS:半導体技術者検定を立ち上げられた経緯について教えてください。
田中代表理事:
検定の立ち上げは2014年に遡ります。当時は半導体に関する検定もなく、さらに検定開始後も半導体にかかわる一部の専門家やエンジニアといった限られた層の方が受験するのみでした。
しかし、半導体の用途がパソコン中心から、スマホ、またさまざまな電子機器、インフラなどに広がり“産業のコメ”といわれるようになったことや、経済安全保障の観点で戦略的に重要な物資として位置づけられたことで、現在では幅広い業界・世代の方に受験していただいています。
CBTS:検定を立ち上げられて3年ほどPBTで実施されていましたが、当時はどのような課題を感じていたのでしょうか。
田中代表理事:
PBTは受験者数が多いと効率良く実施できる試験形態ですが、当検定は半導体という専門的な分野を扱っているため、数年前まではそう多くの方に受験いただくものではありませんでした。PBTでの実施を決めた当初からそのことを理解していたのですが、実際に会場手配においてどの地域にどれだけの受験者が来るかを予想したうえで会場を予約したものの予想が大きく外れることもあり、その労力とコストに課題を感じていました。
CBTS:当時、1開催あたりの会場数はどの程度用意されていたのでしょうか。
田中代表理事:
計3会場程度の主要都市にて実施していました。しかし遠方に住む受験者は前泊をしたり飛行機でアクセスしたりと交通費等の負担が大きく、受験機会の損失も大きかったように思います。
CBTS:試験主催者、受験者ともに負担を感じていらっしゃったのですね。
田中代表理事:
はい。そのような背景もあり、内部で次第に「試験の実施形態を変更したほうがいいのでは」という声が上がるようになりました。
全国47都道府県を網羅するテストセンターの多さが決め手に
CBTS:CBTでの実施に抵抗はありませんでしたか?
田中代表理事:
実は、CBTでの実施も立ち上げの際から検討に上がっていたんです。そのためCBTという試験形態にはそこまで大きな抵抗はありませんでした。
CBTS:CBTベンダーとして、当社をお選び頂いた決め手は何だったのでしょうか。
田中代表理事:
CBTへの転換にあたって他社ベンダーと比較したところ、最も大きな違いを感じたのが「会場数の多さ」です。CBTSは当時から全国47都道府県にテストセンターを展開しており、より受験機会を増やすことができる点が魅力的でした。
CBTS:なぜ受験機会の多さを重視されているのでしょうか?
田中代表理事:
この数年で半導体はその重要性がより増してきています。例えば、半導体受託生産の世界最大手である台湾のTSMC社による熊本での工場建設が挙げられますが、これにより九州で半導体エンジニア及びその知識を有する人の需要が非常に高まっている次第です。専門性が求められる分野ですが、その知識を深め、役立てていきたい受験希望者の方々は全国に点在するため、当検定の受験者層と各地域にテストセンターを持つCBTSは相性が良いと感じています。
試験の運営に割いていた時間を、検定の品質向上に使うことができた
CBTS:CBTへの抵抗は少なかったとのことですが、実際に転換される過程で壁はありましたか。
田中代表理事:
CBT特有の作業として、「作問」に苦労しました。CBTでは、受験者ごとにランダムで出題させる場合、一定数の問題をストックする必要があります。当検定では、試験問題の公平性と一定の品質を保つため半導体分野のプロの先生方に作問をお願いしていることもあり、非常に大変でした。ご協力頂いた先生方には感謝の念が尽きません。
CBTS:CBTの導入後、試験運営の負担は改善されましたか?
田中代表理事:
最も大きな課題であった会場の手配から手が離れ、採点など試験運営に関する業務を一括で委託できたことにより人的・時間的コストが減少しました。その分、今まで手の回っていなかった検定のPRや、試験問題の品質維持に注力することができるようになったのは大きな成果と言えるでしょう。現在は3か月に一度、回答データをもとに作問者の先生方と評議会を開き、より良い試験問題の出題に努めています。
CBTS:受験者層に変化はありましたか?
田中代表理事:
はい。検定立ち上げ当初は半導体分野を専門とする40~50代が大半を占めていましたが、現在は20~30代の若年層が多くの割合を占めており、受験者層の広がりを実感しています。
CBTS:具体的にどういった要因が変化に繋がったのでしょうか。
田中代表理事:
半導体業界の盛り上がりが追い風になった部分もあるかと思いますが、スマートフォンやPCの普及が進んだ現代において、即時予約ができ自分の都合の良い場所・時間で受験できるなど利便性の高いCBTSのCBT方式は、若年層のニーズやライフスタイルに合っているのだろうと思います。
CBTS:それ以外の点での変化はいかがですか?
田中代表理事:
アンケートでより多くの受験者の声を聞くことができるようになったのが嬉しいですね。PBTで実施していた頃は検定の担当者が会場まで出向き、受験者の方へ出口調査をしていました。
しかしCBTでは試験申込時に受験者に関するアンケートを実施しており、その結果をCSVデータとして一括出力できるため、様々な角度から分析がしやすくなりました。また、この分析結果をもとに学習用コンテンツを作成したところ、ありがたいことに良いお声を頂いています。
CBTS:当社の情報サイトである「日本の資格・検定」へ記事広告をご依頼いただいておりますが、反響などあればお聞かせください。
田中代表理事:
「日本の資格・検定」の出稿後、「半導体検定をどこで知ったか」というアンケートで「日本の資格・検定」の広告がきっかけである旨の回答が目立つようになりました。当検定は専門的な分野を扱っているためPRに苦労することが多いのですが、CBTSでは試験の運営面だけでなくPRもお任せでき大変助かっています。
検定を通して、日本の半導体業界に貢献したい
CBTS:CBTを検討されている主催者の皆さんへメッセージを頂けますか。
田中代表理事:
前述の通りですが、CBTに転換したことで試験の「実施」だけではなく「より良くするための施策」に時間を割くことができるようになりました。また、受験者側の利便性も向上したことで受験者層の拡大も実現し、かれこれ8年ほどの付き合いになるCBTSとは一緒に成長してきたと言えるでしょう。CBTへ転換するには作問や導入にかかる初期コストなどハードルはありますが、乗り越えてしまえば試験運営の負担は大きく軽減され、今ではもうPBTでの実施は考えられません。
CBTS:最後に、今後の展望をお聞かせください。
田中代表理事:
半導体は今や我々の生活になくてはならない製品となっています。半導体の進化は継続し、それを使うための知識も幅広い分野で必要となっています。そのための人材育成が急務です。
そこで当検定及び協会がその一助となるべく、検定事業と並行して学習用動画の配信や教材の制作に取り組んでいます。学習用動画については、受験者の方のみならず教える側の先生方にも好評頂いており、また学習教材については一部高等学校にて正式に教科書として導入されるようになりました。こういった取り組みを通じて、半導体の未来に貢献していきたいですね。