「秘書検定」
公益財団法人 実務技能検定協会
理事長 保坂恭世氏
秘書検定は、女性の社会進出に目が向けられ始めた昭和47年(1972年)に誕生した約50年の歴史を持つ検定です。高度経済成長期だった当時は、経営者が効率よく仕事をするために秘書という職業が必要であると注目されるようになった頃で、秘書検定は秘書としての教育だけでなく、日本における秘書の仕事を体系づける役割も担ってきました。
今では、気配り・マナーといった社会で働く全ての方にとって大切な「人間力」を学べる検定として、秘書業務に従事している方・秘書を目指している方だけでなく、社会に出る前の学生などから幅広く支持されています。
50周年を迎えた秘書検定がCBT試験の導入を決意。デジタル化は気配りが行き届いたシー・ビー・ティ・ソリューションズ社と共に。
先行きが見えないコロナ禍。CBT試験は受験者が安心して検定を受けるための手段でした。
これまで年に3回、紙での一斉試験を実施していましたが、2020年から世界的に大流行している新型コロナウイルスの影響で、秘書検定も一度は中止の判断を余儀なくされました。その後も、コロナ禍は世間が予想していた以上に長引き、「次回は開催できるだろう」と楽観的に考えられる状況ではありませんでした。毎年10万人以上の受験者がいる秘書検定をこれからも継続的に開催していくために辿り着いたのが、CBT試験です。
CBT試験なら随時受験ができるため、受験者が一堂に会する必要がなく、「密」にならずに試験を受けることが可能です。また、体調を考えて受験日の選択・変更もできる上、受験しやすい地域のテストセンター(試験会場)を受験者自身が選べるので移動による感染リスクも最小限で済みます。まさに、「コロナ禍でも受験者が安心して試験を受けられる」という点が魅力でした。
CBT試験の導入について協会内で検討したところ、現状で課題となっている「試験会場の確保」「自然災害時の対応」「公共交通機関の事故等発生時の受験者対応」などの手間が軽減されるのではないかという肯定的な意見が挙げられました。コロナ禍でも安心して試験運営ができることに加えて、今までの試験運営上の課題もCBT試験の導入で解決できると分かり、導入を決意しました。
受験者・主催者のどちらの視点でも気配りが行き届いていたシー・ビー・ティ・ソリューションズ社に決めました。
CBT試験を導入すると決めたのは良いものの、私どもにとっては初めての試み。そこで、CBT試験化を支える知見を持ったパートナーとして選んだのが、数多くのCBT試験を手掛け、経験が豊富なシー・ビー・ティ・ソリューションズ社(以下、CBTS)でした。
まず、47都道府県に300カ所以上の提携テストセンターがあり、さまざまな地域に住んでいる方が受験しやすい点が、全国に受験者がいる秘書検定に合うと感じました。受験者が申込サイトから試験申込をする際の手順や操作が分かりやすいことも、CBTSの魅力です。
主催者側としては、CBT試験を実施するにあたっての準備項目がフォーマット化され、まとまっていた点や、疑問があったときのサポート体制がしっかりしていた点もありがたく感じました。私どもの相談事項に対して、営業担当の方やシステムサポートのスタッフの方が素早く丁寧に回答してくださったことも印象深いです。
当初の打ち合わせでは、導入までのスケジュールが3カ月程と非常にタイトに感じられ忙しくなると覚悟していたのですが、CBTSの迅速な対応の結果、2021年3月からCBT試験の導入を実現できました。
受験者にとって利便性が高い試験サービスを展開されているのはもちろんですが、主催者側への配慮も行き届いているのが、CBTSの良さだと思います。
受験者と主催者のメリットのバランスを考えて、紙での試験とCBT試験の併用へ。
受験者層や活用目的の違いから、秘書検定では従来通りの紙を使用した一斉試験とCBT試験を併用して行っております。
2級・3級は受験者の多くが就職活動を控えた学生のため、いつでも受験可能ですぐに結果が分かるCBT試験を導入しました。もちろん、2級・3級でも紙での一斉試験を好む方が一定数いることを考慮し、CBT試験だけではなく紙での一斉試験も併用しております。
一方で、1級・準1級は単語だけでなく文章で答える問題もあり、コンピュータでの採点が難しい点に加えて、二次試験として別日程で行う面接試験があるため、従来通り紙のみで実施することにいたしました。
CBT試験導入の難しさ。疑問をすぐに解消できたのはCBTSのサポートがあってこそ。
CBT化をするにあたって、最も大変だったのは解答例の作成でした。秘書検定の2級・3級には解答を入力する記述式の問題もありますが、CBT試験では即時採点・即時結果発表の形式にしているため、模範解答以外の答えをスタッフが目視で確認することができません。そのため、コンピュータでの自動採点用に、想定される全ての解答例を事前に準備しておく必要がありました。
システムサポートの方にアドバイスをいただきながら問題作成の担当者以外のスタッフも関わって、できるだけ多くの解答例を用意したのですが、とても大変だったのを覚えています。
今では、問題作成の担当者が「解答例を作成した経験が紙試験の問題作成・採点でも役に立っている。作業した甲斐があった」と話しています。CBT試験の導入が、紙試験の運営にも良い影響を与えてくれているようです。
CBT試験の導入で新たな受験の流れが誕生。もっとCBT試験の認知度を上げたい。
CBT試験導入後の変化の1つが、1年間で3級・2級・準1級・1級の全級を取得しようとする方の出現です。これは、1年間で3回しか行っていない従来の紙を利用した一斉試験では困難なことで、今まで予測もしていませんでした。また、一斉試験で不合格だった方がすぐにCBT試験で同じ級に再チャレンジするという事例もあるようです。
CBT試験を始めたことで、今まで日程の都合で受験を見送っていた方やすぐに再受験をしたい方が挑戦できる良い機会になり、新たな受験の流れが生まれつつあります。CBT試験の導入で秘書検定が受験しやすくなったことがもっと広く伝われば、就職活動などに活用できる方が増えるかもしれません。
これからは、CBTSが運営している情報サイト「日本の資格・検定」などと共に、秘書検定のCBT試験を知っていただくための広報活動もしていけたらと考えています。
ビジネスの「芯」を伝える検定として、CBTSと共に変わっていく時代に寄り添い続けていきたい。
秘書検定が歩んできた約50年の間に、女性が社会に出て働くことやパソコンをビジネスで利用することが当たり前になりました。ここ数年でも、リモートワークの普及など社会は変わり続けています。
ビジネスや日常生活で利用するものの多くがデジタル化し、ほとんどの人がスマートフォンやタブレット、パソコンを使用する世の中になりました。社会で働く方にとって大切な気配りやマナーを伝える秘書検定も、時代に適応していく必要があります。コロナ禍がきっかけにはなりましたが、CBT試験の導入による検定試験のデジタル化は、現在の社会に寄り添うための変化なのです。
一方で、人がビジネスを動かしている限り、周囲の人に対する気配りやマナーといった「人間力」の必要性は変わることがありません。人と一緒に働く以上は、お互いが働きやすくするための気配りや、自身の印象を良くするためのマナーは身に付けておくべき大切なポイントなのです。
これらは堅苦しいといったイメージを持たれやすい部分ではありますが、社会の秩序を保つための「芯」になると私どもは考えています。
これからも時代に合わせて変化しながら、秘書検定はCBTSのシステムを活用してビジネスの「芯」を伝えてまいります。