「消費生活アドバイザー資格試験」
一般財団法人 日本産業協会
専務理事 菅原 功 氏
消費生活アドバイザー資格制度は、消費者と企業や行政の架け橋として、消費者からの提案や意見を企業経営ならびに行政等への提言に効果的に反映させるとともに、消費者の苦情相談等に対して迅速かつ適切なアドバイスが実施できるなど、幅広い分野で社会貢献を果たす人材を養成することを目的としています。
昭和55年に消費生活アドバイザー制度が創設されて以来、43年が経ちましたが、この間、本制度の普及や産業界の消費者志向体制の進展、消費者問題に対する関心の高まり等が相俟って、2022年度における試験合格者の累計は18,992人を数え、多くの方々が企業、行政、団体等の幅広い分野で活躍され、高い評価を得ています。
受験者に寄り添った試験運営に向けてCBT化へ。利便性が向上し、受験機会の拡大を実現。
運営負担が増す中、コロナ禍を受け前倒しで第1次試験をCBT化
CBTS:2018年より当社へ紙試験(PBT)の運営を委託して頂いていますが、CBT化を検討されたきっかけは何だったのでしょうか。※
菅原氏:
実はPBT委託よりも前からCBT化について検討していたのですが、消費生活相談員資格の国家試験も兼ねて実施しているため試験制度の変更において課題が多く、まずはPBTの委託からお願いすることとなりました。CBTS社にPBT委託を行ったことで、これまで協会で対応していた顔写真確認を含む紙面での申込受付や、受験者からの問い合わせ対応、また受験票のような資材準備などの事務負担が大幅に軽減されました。
とはいえ、PBTでの試験実施には依然として様々な課題があったのも事実です。例えば、地方在住者の移動を伴う受験負担の大きさや、複数回の試験実施が困難であることが挙げられます。PBTを実施するためには試験会場や試験官を手配する必要がありますが、コストやリソース面で複数日程および多くの会場を手配することができず、開催地も主要都市に限るほかありませんでした。そのために受験におけるハードルが高いことが懸念されていました。
また、自然災害による影響も大いにあります。CBTS社に委託を行った2018年、19年と2年にわたり、奇しくも試験日に台風が直撃し、試験会場に来場できない受験者が続出しました。両社の担当者総出で試験時間の繰り下げや返金対応など出来る限りの措置を講じたものの、前述の通り、PBTは試験会場をはじめとして事前に手配するものが多く、そう簡単に試験日程を変更することはできませんでした。このような事態を受けCBT化に向けた準備を行うも、翌2020年にはさらに追い打ちをかけるように新型コロナウイルスの感染が拡大し、翌年の試験実施の先行きも見えないような状況となりました。そのため加速度的に監督官庁との調整を進め、2021年度試験からの第1次試験のCBT化に踏み切った次第です。
※現在、CBTSではPBTのみの新規お問い合わせ受付を停止しております。
安心の導入実績と、担当者の熱心な姿勢が決め手。
CBTS:PBTに引き続き、CBTベンダーとしても当社をお選びいただいた理由についてお聞かせください。
菅原氏:
導入実績の多さと、熱心な対応かつスピード感でしょうか。PBT委託当初から、CBTS社は数多くのCBT試験の導入実績があり信頼に足る企業であるとの印象でした。また、PBTの委託を問い合わせた当時から試験実施まで少々余裕のない日程だった中で、担当の方々の熱心かつスピーディな対応の甲斐もあり予定通り試験実施を実現することができた点もポイントとして挙げられます。ゆくゆくはCBT化を、と考えていましたが、こういった安心材料もありCBTS社に委託すれば間違いないだろうということで決定しました。
運営コストが軽減。受験者の利便性も向上し、課題解決へ。
CBTS:CBT化をされるにあたり、どのような課題があったのでしょうか。
菅原氏:
大きく分けて4つの課題がありました。
まず一つは出題形式です。CBTは全国各地の試験会場(TC)に設置されたPC上で回答するため、それに適した出題形式である必要があります。これに関しては元々CBT化も視野に入れていたため、PBT委託時からアドバイスを頂き先行的に出題形式の変更を行いました。
次に試験時間です。受験者の“TC予約のし易さ”という観点から、CBTS社のCBT方式では1試験あたり最大120分までが試験時間の目安となっています。当試験は2020年度まで70分の試験を3時限(合計210分)で行っていたため、試験時間の配慮が必要でした。そこで試験問題の構成を再構築し、120分に変更することとしました。従来のPBT時と難易度に差が出ないよう様々な検証の末の変更でしたが、この検証にあたり少々工数を要しました。
三つ目に試験日程です。PBTでは1日程で実施しており、受験者の皆様から試験日程を増やしてほしいとのお声を頂いていました。CBT導入にあたりそういったニーズにお応えしたかったものの、試験制度のガイドライン上、全国同一日時での実施と定められています。CBTの最大の強みは「受験者の都合に合わせていつでもどこでも受験できる」ことですが、当試験の性質を踏まえた結果、最終的に4日程に絞って開催することとしました。これにより、引き続き試験日程の制約はあるものの、受験機会は格段に増えたのではないかと思います。
最後に受験者のサポートです。PBTのスタイルに慣れ、CBTというコンピューターで受験する方式に対し抵抗感を抱く受験者をどのようにケアするかが課題でした。その際に、CBTS社側で受験当日の試験画面操作マニュアルを作成頂くなど、問い合わせ対応を含め手厚くサポート頂けたことで不安の声を最小限に抑えることができました。
CBTS:CBTを導入されて、PBT時代に持たれていた課題は解消されましたか。
菅原氏:
まず改善されたのはコストの面です。CBTを導入したことで試験問題の印刷が不要になり、印刷費や回答用マークシートのデータ処理費を削減できました。また試験会場の手配も不要となったことで、人的にも時間的にも運営コストを軽減できています。
受験者の利便性という面においても、日程の変更が可能になったことや、4日程での開催および離島含む47都道府県での受験が実現したことで、受験にかかるハードルは低くなったと言えるでしょう。また、これまで実施していなかった地域での受験者も増えており、取りこぼしていた潜在的なニーズを取り込むことができました。
CBTS:CBT導入を受けて、受験者の方からの声など聞かれましたか。
菅原氏:
嬉しいお声を多数頂いています。一例ですが「会場へのアクセスが容易になった」、「自分の予定に合わせて日程が選択できるようになり、受験しやすくなったと感じる」などの反響があり、課題としていた部分が改善されていることを実感しております。
CBTS:その他に改善されたことなどございますか。
菅原氏:
試験日から合格発表までの期間が短縮されました。これはCBT導入に伴い受験者情報から回答情報まですべてのデータを1つのシステム上で管理できるようになり、処理効率が向上したためです。具体的に、2020年度は26日要していたところ、2022年度は最短で9日、最長でも17日で発表することができました。
日々寄せられる受験者からの声に応えていきたい。
CBTS:CBTを検討されている主催者様へメッセージを頂けますか。
菅原氏:
CBTの導入にあたって、これまで40年ほどにわたり実施してきた試験制度を変更するのはなかなか労力を要する取り組みでした。しかし、協会内部や監督官庁、そしてCBTS社との検討を重ねることで、さまざまな制約がある中でもCBT導入を実現しました。その結果、受験者にとっても、私たち試験主催者にとっても、より良い形で試験を実施することができています。導入までのハードルは色々あるかもしれませんが、それだけの価値がある試験形態と言えるのではないでしょうか。
CBTS:最後に、今後の展望をお聞かせください。
菅原氏:
当試験は現在、第1次試験をCBT、第2次試験を論文の筆記・対面面接にて行っていますが、受験者の利便性や時代の流れを考慮し、第2次試験についてもデジタル化の検討を進めています。当試験は消費者と企業の架け橋になるような人材を養成することを目的としておりますが、まずは私たちが受験者の皆様の声に寄り添い、より適切な試験運営の実現に向け励んでまいる所存です。